2020年のクリスマスイブ、音楽界に突如現れたSiip(シープ)。その登場は、まるで冬の夜に静かに舞い降りた幻影のようでした。顔出しもせず、プロフィールも謎に包まれ、作品の意図すら説明しない──それでも瞬く間に注目を集めたのは、その歌声と独特の世界観の力でした。
Siipのプロフィール
- 名前:Siip(シープ)
- 出身:日本
- ジャンル:J-POP、オルタナティブ
- 活動期間:2020年12月24日〜
- 特徴:正体不明の幻の表現者。顔出しはせず、作品の解説も行わない
- 制作スタイル:作詞・作曲・アレンジ・演奏・プロデュースを自ら担当
- 音楽の特徴:一点もののハンドペイント的感覚で、非カテゴライズのサウンド(インナートリップ・サウンドスケープ)を創出
- サウンドミックス担当:Chris Galland(Overseen by Manny Marroquin)
- YouTubeチャンネル:登録者数12.4万人、総再生回数約1,146万回(2024年12月13日時点)
Siipは正体不明であること自体がアイデンティティになっており、作品の世界観は聴く者を現実から少し逸脱した異空間に連れて行きます。
声が話題を呼ぶ──大森元貴との類似性
Siipの歌声が特に話題になったのは、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴(もっくん)とそっくりだと言われている点です。声の響き、抑揚、柔らかさまで、もっくんの声に重なる瞬間があります。「もしかして、もっくんの別名義では?」──ファンの間でこの噂はすぐに広まりました。
しかし、声の類似だけで結論を出すのは早計です。Siipの楽曲は、逆再生のようなメロディーや非カテゴライズのサウンドスケープなど、既存のもっくん作品にはない独自性に満ちています。この矛盾こそ、Siipの魅力であり、正体を特定できない理由です。
正体が大森元貴だと言われる理由
では、なぜ多くのファンがSiip=大森元貴ではないかと考えるのでしょうか。その理由を整理すると以下の通りです:
- 声の類似性
- Siipの声は、音域や声質、抑揚のパターンが大森元貴に非常に似ている。特に柔らかく伸びのある高音が特徴的で、聴く者に即座に「もっくんの声」と認識させる。
- 歌い回しや表現の共通点
- フレーズの区切り方や声の強弱、感情の乗せ方などが、もっくんの楽曲に近い。これは単なる声質の類似ではなく、歌唱スタイル全体が近いと感じる人が多い理由。
- 活動時期のタイミング
- Siipの活動開始は2020年クリスマスイブ。Mrs. GREEN APPLEの大森元貴が個人活動を見せていたタイミングとも重なるため、ファンが結びつけやすい。
- 名前や作品の仕掛け
- 「Siip」の「i」が二つあることから、「もっくんとしての私」と「Siipとしての私」の二面性があるのではないか、と深読みする声もある。
- 謎に包まれた活動スタイル
- 顔出しなし・情報非公開・MVの独特な世界観など、正体を隠す要素が多く、バンクシー的な演出とも重なる。
こうした理由が組み合わさり、「Siip=大森元貴では?」という憶測が根強く残っています。しかし、声が似ているだけで決定的な証拠はなく、正体は未だベールに包まれたままです。
二つの「私」が存在する説
ファンの間で面白い考察もあります。それは、Siipの名前に「i」が二つ入っていることに着目したもの。「もっくんとしての私」と「Siipとしての私」、二人の自分が存在しているのではないか──という仮説です。
楽曲やMV、世界観の細部に至るまで、二つの「私」が交錯する感覚が心地よい不思議な体験を生み出します。
楽曲から見える独自性
Siipの音楽は一言で表すと「未知の感覚」。インナートリップ・サウンドスケープと呼ばれる、非日常的で深く引き込まれる音の景色が特徴です。
人気曲には以下のような作品があります:
- 「Cuz I」:幻想的で引き込まれるメロディー。声の美しさが際立つ。
- 「2」:YouTubeで最も再生され、多くのファンが魅了されている曲。
- 「πανσπερμία(パンスペルミア)」:宇宙や生命の起源を連想させる神秘的な世界観。
- 「Walhalla」:荒々しく神秘的で民族的・宗教的な香りが漂い、戦士たちの血沸き肉躍る感覚を呼び起こす。
- 「オドレテル」:もっくん作品を彷彿とさせる繊細さと深い歌詞が特徴。韻を踏んだ表現も魅力。
声の美しさだけでなく、楽曲構造や世界観の緻密さに圧倒されることが、Siipの音楽体験の醍醐味です。
正体は未だベールの中
現時点でSiipの正体を断定できる情報はありません。公式発表もなく、SNSやYouTubeの活動も最小限。声の類似性だけで大森元貴と結びつけることは危険です。それでも、音楽界の「バンクシー」とも称されるSiipの登場は、間違いなく大きなインパクトを与えています。
ファンとしては、正体を知りたい気持ちと、この謎のまま楽しみたい気持ちが同時に存在します。このミステリアスな空気こそ、Siipの魅力なのです。
まとめ
- Siipは正体不明で顔出し・情報非公開のアーティスト
- 声が大森元貴に似ているため憶測が絶えない
- 楽曲や世界観は独自性が強く、単なる「もっくん別名義」では片付けられない
- 「二つの私」が存在するというファン考察も面白い
- 正体不明だからこそ、音楽・MV・世界観すべてが魅力になっている
Siipの正体は誰なのか、今のところ確実なことは何もわかりません。しかし、その謎こそが私たちを引き込み、音楽と映像の世界に没入させます。次に新曲やMVが公開されるとき、もしかしたらヒントが見つかるかもしれません──でも、やっぱり少し謎のままでいてほしい、そんな複雑な感情も抱かせるアーティストなのです。